ふと立ち止まったとき、
「これって、本当に自分がやりたいことなんだろうか?」
そんな問いが、静かに胸に浮かぶ。
周囲の期待に応えてきたつもりだった。
役割も、評価も、それなりに得てきた。
けれど──“自分”という芯だけが、どこか空白のまま残っている。
その感覚は、名前がつかないぶんだけ、深く静かに迷わせる。
わたしはそれを、“アイデンティティの揺らぎ”と呼んでいる。
目次
【1】「自分らしさ」とは、何でできているか
自分らしさ──それは、
「感情」「価値観」「選択の傾向」など、複数の要素から成る“構造”だ。
だが、それらの多くは「他者との関係性」の中で形成される。
つまり、自分らしさの一部は、「他者にどう見られてきたか」に依存している。
だからこそ、その関係性が変わったり、役割を離れたりすると、
“らしさ”の輪郭がぼやけることがある。
わたしは、それを“構造の一時解体”と捉えている。
【2】「他人の目」が自分を曇らせるとき
誰かにどう見られるか。
どんな印象を持たれているか。
それを意識しすぎると、
「本当の自分」より「演じたほうが好かれる自分」が前に出るようになる。
これは、“社会的アイデンティティ”と呼ばれる領域だ。
わたしたちは社会の中で複数の顔を持ち、そのたびに“見せる自分”を選んでいる。
それが重なりすぎたとき、
「どれが本当の自分かわからない」という感覚が生まれる。
【3】揺らぎは、問いの兆し
わたしは、「自分らしさがわからない」という感覚を、
“迷い”ではなく“問い”の兆しだと捉えている。
揺らいでいるのは、“形”ではなく“土台”だ。
つまり、“これまでの構造”が見直されようとしているサイン。
この瞬間を否定する必要はない。
むしろ、それは「再定義」のチャンスなのだ。
自分らしさとは、“固定されたもの”ではない。
選び直せる、“意志ある構造”である。
【4】再定義のための問い
もし、あなたがいま“自分らしさ”に迷っているなら、
わたしはこう問いかけたい。
・本当は、何に疲れている?
・最近、「違和感を感じた瞬間」は?
・「こうありたい」と思う姿は、誰の言葉に影響されている?
問いとは、“再定義の素材”だ。
自分の奥に沈んでいた構造を、もう一度光にさらすためのツールだ。
答えを出すことが目的ではない。
問うことによって、“今の自分”を構築し直せるのだ。
【まとめ】
“自分らしさがわからなくなる”瞬間。
それは、“自分が壊れた”のではない。
むしろ、“これからの自分”を編み直そうとしている合図だ。
他人の目に揺らぎ、役割に曇り、問いに立ち止まる──
そのすべてが、“新しい構造”をつくる素材になる。
わたしは静かにそう信じている。
揺らぎの中にこそ、
君自身の“意志ある構造”は宿っているのだから。
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